田村薬品工業株式会社

Webマガジン 元気!ラボ

2023.01.31

【第2回】CBDを取り巻く環境

CBD

カンナビジオールはさまざまな可能性を有するとても魅力的な化合物です。このコラムでは、カンナビジオールの特徴、取り巻く環境、安全性、有用性などについて、科学的な視点から解説し、この化合物に対する理解を深めていただきたいと考えています。また、規制当局の動向や世界保健機関の「カンナビジオール批判的審査報告書」など、さまざまな情報をおりまぜてご紹介いたします。

 

CBDの市場概況

CBDは、多くの試験で抗不安、抗てんかん、鎮痛、抗炎症などの効能効果が認められていることから、欧米を中心に医薬品や一般的な嗜好品としてさまざまなCBD製品が続々と登場しています。特に化粧品、飲食品、ベイプ、ペット用品などで取り扱われ、大きな可能性を秘めたビジネスとして、ライフスタイルやヘルスケア分野で大きく躍進しています。

近年、日本でもCBD製品への注目が高まっており、参入企業が増加しています。百貨店や化粧品専門店、美容クリニックなどでもCBD製品を販売しており、各都市にCBD専門店やCBDカフェがオープンしています。また、ヤフーショッピングや楽天市場などで検索すると多くのCBD製品を目にすることができ、着実にCBD市場は拡大しています。

一方、規制緩和や法改正に関しても、厚生労働省が2021年に「大麻等の薬物対策のあり方検討会」、2022年に「大麻規制検討小委員会」を開催して議論されました。その結果、大麻由来の医薬品の治験が国内で開始され、承認後の製造・施用に向けた方向性が確認されました。また、CBD製品中のTHC残留限度値を設定し、健全で適切なCBD製品の流通への方向性も示されています。このように、CBDの利用が医薬品にまで広がり、自社製造・販売への道筋も整備されつつあることから、今後さらなる市場拡大が見込まれます。

 

CBDの市場調査結果

2022年に株式会社矢野経済研究所は、国内におけるCBD製品市場の調査を実施し、その結果をプレスリリースしました。調査対象のCBD製品は、食品、ベイプ(電子タバコ)、化粧品です。

それによりますと、2021年における国内のCBD製品の市場規模は、小売金額ベースで前年比185.9%の185億4,100万円、2022年は前年比139.9%の259億3,600万円を見込まれるとのことです。その後も市場規模は拡大を続け、2025年には約830億円になると予想しています。

拡大要因として、百貨店や商業施設の期間限定店舗や化粧品専門店、バラエティショップでの取り扱いが増えたこと、各種メディアでもCBDが取り上げられるようになったことを挙げています。このため、一般消費者がCBD製品を目にする機会が増え、新規参入企業が増加しました。また、2020年のコロナ禍では、心身に対してさまざまな作用があるCBDにさらに注目が集まり、精神的な落ち着きを求めて製品が使用されることも多く、急激な市場の拡大につながったと考察しています。2023年以降の市場拡大予想については、2022年6月に政府の骨太方針2022(経済財政運営と改革の基本方針2022)で「大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める」と発表されたことから、大手企業の参入も予想されるためとしています。

また、矢野経済研究所は、今後のCBD製品のラインアップの中に「Made in Japan」の製品が増えるのではないかと予想しています。新規参入企業が増え、競争が活発化している中、差別化を目的として海外からCBD原料を仕入れ、製造・加工を日本で行う事業者が増えているそうです。こうした「Made in Japan」の製品は、安全性を担保するために、原料の仕入れ先・国内の両方で複数回のTHC含有量の検査が行われていることがほとんどです。今後、安全性を追求した日本のCBD製品は、市場でさらに存在感を増していくものと見込まれます。

 

CBD製品の輸入に係る現状

上記のように、日本製のCBD製品が増えていることは間違いありませんが、現在、日本で流通しているCBD製品はほとんどが海外から輸入されています。その際、税関における通関検査もしくは関東信越厚生局麻薬取締部における大麻取締法の大麻該当性の確認を受けた上で輸入することになります。

輸入の手続きの流れは、以下の通りです。

①貨物の到着

②食品等輸入届出

③検疫所における審査

④食品等輸入届出済証発行

⑤税関での通関手続

⑥大麻該当性確認

最後の大麻該当性確認で大麻非該当であれば国内流通が可能ですが、大麻該当となると放棄・廃棄されます。

輸入しようとするCBD製品の大麻該当性は、①「大麻草の成熟した茎又は種子から抽出・製造されたCBD製品であること」の証明書、②成分分析書(製品のロット番号ごとのTHCとCBDの分析結果)、③CBDの原材料及び製造工程の写真(大麻草由来製品の場合)により、関東信越厚生局麻薬取締部で確認されます。また、輸入届出を行う前に確認を依頼することも可能です。ただし、この段階では書類審査のみのため、輸入後にTHCが検出されないことが保証されているわけではありません。輸入後にTHCが検出された場合、「大麻に該当するものを輸入したもの」として処罰を受ける可能性があります。

一方、これらの検査・確認を受けずに輸入されるCBD製品も存在します。厚生労働省は、流通している製品について抜き打ち検査を行っており、そのようなCBD製品からTHCが検出された場合、大麻取締法における「禁止部位が混入したおそれがあるもの」として販売者、製品名などが厚生労働省のホームページに公表されます。市場からの回収に至った15 製品の事例が 2022年7月までに公表されています。CBDを含有した製品に係る安全性を確保し、健全な市場育成を推進する仕組みの構築などが求められています。なお、厚生労働省が行うTHC検査の検出限界値は公表されていないため、事業者は信頼できる検査機関で低い検出限界値でのTHC検査を行い、製品にTHCが含まれないことを確認する必要があります。

 

消費者におけるCBDのイメージとは

2021年に株式会社PLAN-Bは、全国の10代~60代の男女1000人を対象にしたCBDに関するアンケート調査結果をプレスリリースしました。その概要を紹介します。

「CBDとは何か知っていますか?」という質問に対し、「知らない」「聞いたことはあるが、どんなものか知らない」という回答を合計すると86%であり、CBDの日本での認知率は低いことがわかりました。「知っている」「使ったことがある」人の情報源の多くはインターネットでした。

「CBDのイメージは?」に対し、多かった順に「大麻草由来なので抵抗がある」36%、「怖い」15%、「興味がない、必要性を感じない」8%、「依存性がありそう」5%と、ネガティブな回答が上位を占めました。一方、少数ながら「リラックスできそう」4%、「安眠できそう」2%というポジティブな回答もありました。このような背景もあって「CBDを使ってみたい」人は13%にすぎず、「すでに使った」人は4%しかいませんでした。

今回のPLAN-B社のアンケート調査により、改めて日本での認知率や使用率は低く、「大麻」という言葉自体に苦手意識がある人が多いことがわかりました。しかしながら、本コラムの「CBDの市場調査」の項でも紹介しましたように、ここ数年のCBD製品の市場規模は右肩上がりであり、今後はその認知度も上昇するものと予想されます。それと相まって、CBDという物質そのものは、依存性も乱用性もなく安全であり、国際的な薬物条約の規制対象外で違法ではないことが浸透すれば、日本国内でのイメージも間違いなく変わってくると思われます。